高校模擬国連世界大会 最終日報告
2023.04.30
会議は今日が最終日です。先日の記事でも申し上げた通り、今日は国連本部のビル内で会議が実施されることになりました。厳重なセキュリティチェックを通過したあと、ビル内の広い議場に到着。席の前にはマイクや投票ボタンが設置されているため、気持ちも高まってきます。最終日は、昨日提出された決議案に対する修正事項(英語ではamendmentsと言います)の確認と、最終的に決議案に賛成するかどうかの投票が行われました。海城は2つの決議案にsignatory(署名者)として名を連ねる形をとりました。決議案は無事に採択されました。
これが最終日の会議場です。机の上にマイク・投票ボタン・通訳機器が備え付けられています。
昼食を挟んだあとは、国連本部の総会会議場で閉会式が行われました。階段を少しずつ登った先には、国際ニュースで目にするあの議場が姿を現しました。感動的な光景です。世界中から集まった大使が、記念撮影を行います。日本代表団は、早めに列に並んでいたこともあり、幸運なことに議場の中の前方の席に座ることができました。閉会式が行われた短い時間の間ではあるものの、本物の大使が座る席に腰掛けることができたことは、思い出という言葉では語り尽くせない、何物にも代え難い財産になったことでしょう。日本代表団では、渋谷教育学園渋谷高校の二人が見事最優秀賞を受賞しました。快挙を心から讃えたいと思います。その他にも、渋谷教育学園幕張高校のペアが優秀賞を、灘高校の二人も優秀賞を受賞しました。海城の二人は残念ながら賞の受賞には至りませんでしたが、健闘を讃えたいと思います。
最後に、本番の会議以外で引率教員の立場から最も印象に残ったことを記して今回の報告を締めくくりたいと思います。それは、表敬訪問でオンラインでお話しくださったUNDPの小松原氏のお話です。お話の中で、テロリストについて話が及ぶシーンがあったのですが、小松原氏はこのようなことを仰いました。「人はテロリストとして生まれるのではない。環境が人をテロリストにしてしまうのだ。人種や細かい考え方の違いはあるが、皆、同じ人間であることには変わりはない。どの親も自分の子供にはいい教育を受けさせたいと思うし、健康でいてほしいと願うものだ。同じ人間と接しているということをどうか忘れないでほしい。問題を抱えている人に寄り添ってほしい。無関心は罪である。」ということでした。一人の教育者として、一生心に留めておきたいメッセージだと感じた次第です。
同氏が高校生に対する助言として述べられた「5つのP」についても改めてここで紹介させてください。これは国連などの国際機関で働くことを目指す高校生だけでなく、高い志を持つ全ての若者にとって貴重なアドバイスだと思いましたので再度紹介する次第です。1つ目のPは、Purpose(目的意識)です。自分は何のためにここにいるのか、何をやりたいのか、このことが曖昧なままでは結果は出ない、ということでした。学習にも応用できそうな考え方ですね。2つ目がPossibility(可能性)を追求せよ、ということでした。すぐに諦めてはいけない、粘り強く交渉・議論せよ。同じ目線で話すことがスターティングポイントだということを強調されていました。3つ目はPersonality(性格・人格)です。十人十色、いろんな性格があり、それは個々に尊重されるべきである。一見弱点に見えることも、場合によっては強みになることもある。それぞれの人が強みを活かして堂々と行動すれば宜しい。ただ、最後の最後には、その人の人格がものを言うことは否定できない。「この人がここまで言うなら協力してみよう」と相手に思わせる言動や行動を普段からとることが重要だ、とのことでした。非常に厳しく、と同時に大いに励みになる助言でした。
4つ目は、Publish(発信すること)を大切にしなさい、というアドバイスでした。ソーシャルメディアが発達している今、誰もが自分の意見を世界中どこにいても述べることができる。発信にあたってはもちろん注意しなければならないことも多いが、自分の存在を主張し、自らの意見をどんどん述べることが極めて重要である、というお話でした。これを聞いて、”Publish or Perish(論文をとにかく書け、さもなければ学問の世界から去れ)”という言葉が頭に浮かびましたが、国際機関においては特にこの精神が重要視されているのだな、という思いを新たにしました。今回の記事も異常に長く書いていますが、このPを念頭に置いたもの、ということでお許しください。最後のPに関しては、ユーモアたっぷりに、「最善を尽くしたのであれば、あとはとにかくPray(祈る)のみ」と仰いました。日本にも「人事を尽くして…」という表現がありますが、どんなに頑張ってもコントロールできないこともある、自分自身の最善を尽くしたのであれば何も恥じる必要はない、という趣旨のメッセージでした。海城生の諸君にも、この5つのPについて考えてみることを強くお勧めしたいと思います。
この写真は最終日のものではないのですが、改めて掲載させてください。
さて、4月25日(火)に羽田を出発した日本代表団の旅も終わりに近づいてきました。いろいろなことがあり、実質5日間しかこちらで過ごしていないにもかかわらず、その数倍の濃密な時間を過ごした感覚です。改めて、海城からこの日本代表団に名前を連ねた二人を紹介します。土屋哲史君は、終始落ち着いた言動と行動で日本代表団のスムーズな動きに貢献していました。会議本番での堂々としたスピーチも大変立派でした。彼が中1の時に英語を教えた縁がありましたので、一緒にニューヨークに来ることができ、非常に嬉しく思っています。そして、桝田啓太郎君は、その卓越した英語力で、会議で数多くの大使に積極的に声をかけていました。会議最終日には、本会議が始まる前に、他国の大使の緊張を和らげる目的でグータッチをしていた姿が印象的です。彼の優れた国際感覚は、これからの彼のキャリアにおいて一層輝きを増していくことでしょう。2人は5月末に行われる派遣報告会をもってグローバル部を引退します。確かな足跡を残して部を去る両名から、後輩諸君も多くのことを学んだことでしょう。日本から遠く離れた地で堂々と会議に参加し、積極的に行動した二人を改めて讃えたいと思います。本当にご苦労様でした。
現地からの報告はこの記事をもって終了と致します。ここまでお読み頂き、誠にありがとうございました。最後に(本当にこれで最後です)今回の渡航にあたっては、保護者の方々をはじめとして学校内外・国内外の様々な人々にご理解・ご協力を賜りました。その一人一人のお名前をここで述べることはできませんが、改めて心から感謝申し上げます。本当にどうもありがとうございました。(了)